
ご年配の生徒さんが「屋根裏から出てきたんです。たぶん主人のものだと思うのですが、まだ使えますか?」と、一本のウクレレを持って来られました。
拝見して思わず一言。
「うわ…年代モノですね!」

それは、1960〜1965年頃に製造されたヤマハの「No.60C」。およそ60年前の楽器です。
ラベルには「NIPPON GAKKI(日本楽器)」の文字。これは現在のヤマハ株式会社の旧社名で、時代を感じさせるポイントのひとつです。

ちなみに「ヤマハ」という名前は、創業者である山葉寅楠さんの名字に由来しています。
当時の販売価格は約1,200円。高卒の初任給が約15,000円の時代ですから、決して安価な楽器ではなかったことが分かります。

特に興味深いポイント:フリクションペグ
この個体で特筆すべきは「ペグ」です。
現在主流のギア式ではなく、ウクレレ誕生当初の形式そのままの「フリクション(摩擦)ペグ」。
これは、ヘッドに開けた穴へ棒状のペグを差し込み、摩擦だけで弦の張力を支えるという非常にシンプルな構造です。三味線と同じ仕組みですね。
当時は「弾き終わったら弦を緩める」が常識でした。今のように強力な接着剤が無かったため、張りっぱなしにすると、サドルが飛ぶなどトラブルも起きやすかったのです。
今でも使えるのか?
結論としては「問題なく使えました」。
実際に、丁寧にクリーニングを行い、弦を交換したところ――
驚くほどやさしく、あたたかみのある音が蘇りました。
いやー、良いもの見せてもらいました。